頭頸部癌は頸から上で脳と眼球を除いた領域に発生した癌をいいます。癌全体の約5%を占め、具体的には舌癌、下咽頭癌、中咽頭癌、上顎洞癌などがそれに該当します。頭頸部領域は発声や摂食・嚥下といったヒトの生活の質(Quality of Life: QOL)に直接関わる領域であり、治療によるそれらの機能損失は、治療後のQOLに大きな影響を与えます。当科では、癌治療の根治性とQOL維持のための機能温存の両立を目指しつつ、化学療法、放射線治療、手術の3者を組み合わせた集学的治療を行っています。
当科での頭頸部癌に対する取り組み
・多職種参加で行うキャンサーボードにおいて適応判断や有害事象の管理等、症例の綿密な検討を行います。
・治療後QOLの維持を目的に歯科口腔外科、リハビリテーション部、緩和ケアチーム等の他科・多職種と連携し、対応しています。
・咽喉頭がんに対する低侵襲手術としてTOVS(経口的下咽頭喉頭部分切除術)、ELPS(endoscopic laryngo-pharyngeal surgery、消化器内科と共同で施行)を行っており、2023年9月経口的ロボット支援手術(2022年保険適応)の実施施設に認定されています。
・進行癌の広範囲切除症例に対し、遊離空腸・腹直筋皮弁・前腕皮弁等を用いた機能再建手術を形成外科と共同で行っています。
・進行上顎洞癌に対する機能温存治療として超選択的動注化学療法を放射線治療科、放射線診断核医学科と共同で行っています。
・従来の放射線治療に抵抗性を持ち、その適応が困難な一部の悪性腫瘍に対し、重粒子線治療を行っています。(放射線治療科や重粒子線医学センターと協議のうえ、症例に応じて適応しています)
・手術、放射線治療、化学療法、免疫チェックポイント阻害剤に続く第5のがん治療法としての光免疫療法(頭頸部アルミノックス治療 2021年保険適応)認定施設です。
・基礎研究と臨床研究を橋渡しするトランスレーショナルリサーチに積極的に取り組んでおります。