サンディエゴよりこんにちは、管理人の高橋秀行です。
今回は管理人ブログ「秀@San Diego」の新企画として、私が出向しているサンディエゴで活躍する日本人研究者を御紹介したいと思います。
第一弾では、私と同じUCSD Moores Cancer Centerで勤務されている、東海大学医学部耳鼻咽喉科の酒井 昭博 先生を御紹介させて頂きます。
酒井先生はなんと、あのModified-Killian’s method(MK法)を開発された先生なんです!
MK法とは、頭頸部癌の好発部位である下咽頭を内視鏡で観察するための体位なのですが、その効果は絶大で、日本中(世界中?)で、もちろん我々群馬県の耳鼻咽喉科医の間でも広く普及しています。
どんな体位か、言葉で説明するより見て頂くほうが早いと思うので、実際に私が被検者として酒井先生にMK法を実践して頂きました。
このように、おへそを見るように頸部を前屈し、さらに回旋させるという、これまで誰も思いつかなかったような体位なのですが、この体位を取ることで今まで見えなかった部分が驚くほどよく見えるんです。
ちなみにこれが従来法。
この画期的な方法を編み出した先生が、実は身近にいらっしゃったことに最近気付いた私は、すぐさま取材を申し込みまして、快くOKして頂けましたので、以下で酒井先生へのインタビューをお届けしたいと思います♪
本日はよろしくお願いいたします。まず、MK法の開発に至った経緯について教えてください。
よろしくお願いいたします。
簡単に経緯をご説明すると、私は癌の早期発見・早期治療に興味がありまして、下咽頭を通常の経鼻内視鏡でより詳細に観察するために試行錯誤する過程で誕生しました。
詳しい経緯は…秘密です(笑)講演に呼んで頂ければお話しします(笑)
では講演でお伺い出来る日を楽しみにしております(笑)
次に、MK法の特徴を教えてください。
前屈した状態で横を向くという、これまで一般的に用いられてきた頸部後屈位とは真逆の体位なのにもかかわらず、従来の体位では内視鏡での観察が困難であった部分まで詳細に観察が可能であるという点が大きなポイントです。
実際に実臨床で活用していて、どのような手応えがありますか。
表在癌を早期発見出来た!という経験は意外にまだ少ないのですが、「上部消化管内視鏡で見えた病変が耳鼻科の内視鏡だと見えない」ということは無くなりました。胃カメラで見えたものはMK法であれば必ず見えます。
癌以外では、下咽頭に隠れた魚骨や、梨状陥凹瘻の入口部が内視鏡で観察出来るようになりました。梨状陥凹瘻については既に他施設より論文も発表されています。
梨状陥凹瘻が見えるというのは驚きですね。
他施設からの反響はいかがでしょうか?
お陰様で非常に反響を頂いています。
一番最初に発表したのは表在癌研究会という東京で開催されている研究会でした。その後、日耳鼻総会にて全国学会で初めて発表したのですが、表在癌研究会で発表した際に興味を持ってくださった先生が、私が発表を行った日耳鼻総会のランチョンセミナーで早速紹介してくださった、というエピソードがありました。
その後論文でも発表させて頂き、全国の先生から反響を頂いております。耳鼻咽喉科医だけでなく、上部消化管内視鏡医の先生からも反響を頂いており、非常に嬉しく思います。
それでは最後に、MK法の今後の展望を教えてください。
従来法では発見出来なかったような下咽頭の早期癌の発見に役立てていきたいと考えています。下咽頭癌はある程度進行してから発見されるケースが多く、治療も高侵襲なものしか選択出来ないケースが多いのが現状です。
そこで、MK法を早期発見・早期治療に役立てることで、低侵襲かつ機能温存可能な治療を選択出来る患者さんが増えれば幸いです。
そのためには、喫煙・飲酒等の高リスク因子をお持ちの方を対象に、胃カメラ検診のような感覚で経鼻内視鏡検診が出来るようになれば、MK法をさらに活かしてゆくことが出来るのではないかと考えています。
先生の今後の一層のご活躍を期待しております。本日はお忙しい中誠にありがとうございました。
…いかがでしたでしょうか?
もしMK法をまだ実践されたことのない先生がいらっしゃいましたら、是非とも試してみてください!
本法が多くの患者様にとって福音になることを、私も願っております。
酒井先生、本当にありがとうございました!