サンディエゴよりこんにちは、管理人の秀です。
5月に続き、6月もSan Diegoに日本からのお客様がいらっしゃいました!
神戸大学医学部附属病院救命救急センター、神戸大学医学部大学院外科学系災害救急医学分野 先進救命救急医学 井上茂亮 特命教授 と、学術研究員(ポスドク)の斎藤雅史先生です。
お二人は、42nd Annual Conference on Shockに参加されるため、来米されました。
高齢者の感染症は、日進月歩の現代医療の中で依然大きな課題となっています。
集中治療を専門とされている井上先生は、ICUで頻繁に遭遇する敗血症、とりわけ高齢者の敗血症に対し、免疫系の賦活を介した新規治療の開発を目指し、日々基礎研究に取り組まれています。
私が専門としているのはがん免疫ですが、宿主の免疫系に介入して治療効果を得るというアプローチは共通したものであり、実際の解析手法や内容も似通った部分が多く、非常に有意義な意見交換をさせて頂くことが出来ました。
ところで、同じ免疫学のフィールドにいるとはいえ、救急医学の教授という、私のような耳鼻科医には縁のなさそうな方と親しくさせて頂いているのは、井上先生が母校の香川大学の先輩という繋がりがあるからです。
そして井上先生は、私が基礎研究、そして海外留学という道へ進んだ、最初のキッカケを与えてくれた先生です。
11年前。
当時、初期研修医2年目として母校の香川大学の耳鼻咽喉科に勤務していた私(写真左)は、友人(写真右)に誘われ、Washington University in St.Lous, Dr. Hotchkiss Labへ留学されていた井上先生にお会いするため、差し入れである子供用歯ブラシを握りしめ、セントルイスへ遊びに行きました。
初めて訪れるアメリカの地、全てが真新しく感じられましたが、海外のラボを訪れて(ピザを貰うために)Conferenceに参加したり、Dr. Hotchkissにご挨拶するなどした体験は非常に刺激的かつ新鮮で、その時の記憶は今でも色鮮やかに思い出すことが出来ます。
それまで留学はおろか、基礎研究という選択肢すら考えたことが無かった私でしたが、基礎研究、そして海外留学という道が、他ならぬ自分の前にも開けているという、一見当たり前のようなことを、おそらく初めて意識した瞬間だったと思います。
この鮮烈な体験が灯した種火は、その後も私の心の片隅で静かに燻り続け、5年の時を経た後、近松教授との出会いによってささやかな焔を燃え上がらせることとなりました。
あれから11年。
耳鼻咽喉科医になり、家庭を持ち、専門医を取り、学位を取り、気が付けばアメリカに暮らして約2年が過ぎました。
子供用歯ブラシを握りしめて、不安と共に初めて訪れたアメリカの地での体験が、その後の自分の人生を大きく変え、11年の時を経た後に、家族と共にアメリカに暮らし、逆に井上先生をアメリカへお迎えする日が来るとは、あの時は本当に夢にも思っていませんでした。
“Where there’s a will, there’s a way.”
アインシュタインはチップ代わりに名言を残しましたが、特にwillもなく、たまたま人から頂いたwayで何となく歩を進めるうちに、やがて自分のwillを得ることとなった私の偶然と幸運。
人との出会いの大切さ、それが時の流れを経てもたらす変化の大きさを、改めて強く感じています。
今回私の妻が井上先生にリクエストした日本からのお土産は、偶然にも子供用歯ブラシでした。
常に途切れることなく大きな炎を燃え上がらせて、後輩たちの道を時々ヤケドさせつつ(笑)照らしてくれる大先輩には遠く及びませんが、11年の時を越え、バトンの代わりに歯ブラシが繋いでくれたこの種火を次の世代に繋いで行けるよう、今度は自分のwillを持って、自分自身のwayを切り拓いて行きたい。
そんなことを考えさせてくれた、久々の再会でした。
井上先生、斎藤先生、ありがとうございました!