どーも、松山です。
COVID19感染拡大により学会はオンラインでの参加が続いていました。
今回は約1年半ぶりの現地参加での学会です。
免疫アレルギー学会と感染症エアロゾル学会が統合された第1回耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会に、十分な感染対策をしながら行ってきました。
場所は加賀百万石の金沢、私は初めての金沢でした。
北陸新幹線開業により高崎駅から2時間で金沢駅に到着。便利になりましたね。
まず現地参加での学会は良いですね。
もちろんオンライン参加でも良いところはあります。
自分の好きな時に、好きなセッションを自分のペースで聞ける。それは認めます。
ただ
『どうも久しぶりです。最近どうですか?あのさー、この薬は実際全然効かない人もいますよね。検査値は良いけど、所見は変わっていないよね。そうそう、発表では言ってないけど。』など、実際の発表ではエビデンスがないため言えないことなどを、他大学の友人と学会会場の隅で話をする。
『次の聞きたいセッションまで時間があるな、自分の専門とは違うセミナーだけど、時間があるから聞いてみるか。へー、こんなに治療が変わっているんだー』など、偶然入ったセミナーからの得る知識。
『夜、食事でもどうですか?』なんて医局員同士、診療以外の熱い志や愚痴など普段話すことのない他愛もない会話を交えた食事。
上記のような学会における最も重要な点がオンライン学会ではないのですよ。
発表スライドなんて、自分で作り上げたところで、お終い。
学会には発表以外にもっともっと大切なことがたくさんあるのです。
わざわざ連絡してまで話すことではない何気ない近況報告、医局員の普段から感じていることや違った一面の発見、ふと聞いたセミナーから得る知識や考え方、時間制限がある中でのディスカッション等々。
人と人が直接会って話すニュアンスやその場での臨場感からしか得られない大切なもの、偶然の産物が現地にはたくさんあるのですよ。
金曜ロードショーでたまたまやっている、何十回も見たジブリ映画を見入ってしまい、『やっぱいいわ。』というあの何とも言えない感覚。
いつでも好きな時にみられるシステムでは絶対に感じられません。(ちょっと例えが違うか)
やっぱり私は直接会って、人間同士の温かみを感じたい、そーまずは言いたいのです!
さて、、、、冒頭が長くなりました。。。。。。
学会内容に話を移しましょう。当科からは私に加え、ボスの近松先生、多田マロ先生が参加しました。
教授は『自己炎症疾患の発症機序とエクソソームの役割』という特別講演の司会を。
多田先生は『ニボルマブ治療における末梢血循環癌細胞のバイオマーカーとしての意義についての検討』と題して、日ごろの研究成果を奨励賞応募演題として発表しました。
近年レベルが上がっている免疫アレルギー学会奨励賞の応募演題の中でも、これは奨励賞ゲットかもしれないと思わせる発表でした。
私は『Dupilumab投与前後の鼻副鼻腔臨床所見と末梢血中好酸球の変動についての検討』と題しまして、先日いち早くdupilumabの臨床効果を論文化した内容の続編を発表してきました。
血中好酸球が高いのに、臨床所見は改善しているという今までの好酸球研究概念とは反する謎について皆と話し合ってきました。
今回の学会で私が一番心に残ったこと、それは、先ほどの話ではないですが、ふと聞いた頭頸部癌治療のセミナー内での言葉でした。
『Tumor agnostic』
現在の癌治療は頭頸部癌、胃癌、肺癌、肝臓癌等々、様々な臓器別に癌を分類し、その中からSCC、ACC等組織型によって、悪性腫瘍を分類しています。
そしてそれらの情報を元に治療が決まっていく。
Tumor agnosticとは、そのようなものはすべて取っ払って、臓器や組織型にとらわれず、腫瘍の遺伝子データから分類し治療法を決めていくという概念です。
前回の頭頸部癌学会報告記で高橋秀先生が書いていましたよね。秀先生の文章をそのまま引用します。
個人的な見解ですが、今後10年のうちに、患者さんの検体から取り出したマルチオミックスデータをAIアルゴリズムで統合し、癌の様々なパラメーターを定量化したのち、分子標的治療がよいのか、免疫治療がよいのか、手術がよいのか、といった治療選択を出来るようなシステムが登場するのではないかと思っています。
鼻領域は癌領域に比べ、生物学的製剤の治療に遅れをとっています。
私は鼻領域においても、標準化診療から個別化診療に今後なっていくと思っています。
これからオマリズマブ、デュピルマブ以外に様々な生物学的製剤が出てくるでしょう。
鼻科免疫アレルギー領域においても、ECRS、EGPA、NERD等、様々な臓器別の病態がある疾患の中で、その検体から取り出したマルチオミックスデータによって、数ある生物学的製剤を選択し治療する時代がやってくると思います。
AIが手術をし、AIが治療方針を決める。
『人間の温かみを感じられる人間性を持てること』が、今後生き残る道なのかもしれません。
本出張を支援してくださった医会の皆様、同門会の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。
松山敏之