皆さんこんにちは。現在伊勢崎市民病院に勤務しております、高橋薫です。
今回私はカナダ・モントリオールで開催されたAHNS 11th INTERNATIONAL CONFERENCE ON HEAD & NECK CANCER (July 8-12, 2023)に参加してきましたのでこの場をお借りしてご報告をさせていただきます。
本国際学会には私、そして近松教授が参加されました。学会が催されたモントリオールまでは飛行機で約12時間、直行便とはいえ、コロナ禍で約4年ぶり海外ということもあり、ホテルに着いた頃には既にヘロヘロでした。時差は13時間、時差ボケをもろにくらい、日中の眠気と深夜の覚醒、初日からきつかったです。
学会会場であるPalais des congrès de Montréalは非常に大きく、国際学会に相応しい出立ち(虹色)をしており、会場に入る前から圧倒されてしまいました。しかし会場内はガンガンの冷房で極寒、冬眠しそうでした。
さて、今回私は近松教授をはじめ医局諸先生方より大変貴重な機会をいただき、Radiation SessionのPodium Presenterとして発表致しました。
※表題:Biphenotypic sinonasal sarcoma: Report of two cases treated with carbon-ion radiotherapy
会場内に入って他演題を見てまわっていると多くのCase Reportはポスター発表形式のようでしたので、口演で参加出来たことの貴重さに気付くとともに、BSNS+重粒子線治療というインパクトがそれなりに大きかった事を実感しました。時間をかけて準備をした甲斐があったと思います。実際の発表ですが、発表だけであれば一方通行で、英語も練習して覚えてしまえばなんてことはありません(とは言っても本番は想像以上の緊張でしたが…)。しかしDiscussionは4人、場合によっては6人毎にまとめて行う形式でした。まず誰に対する質問なのか、また前置きが異常に長く(きっとこれが国際学会の普通なのでしょう)、結局聞きたいことは何なのか全然分からずプチパニック状態でした。やはり言葉の壁というのは高いもので、ネイティブの話すスピードや発音の聞き取れなさに加え、自分が伝えたい事の英語変換能力の乏しさに愕然とし、非常に悔しく思いました。対して近松教授は非常に素晴らしい発表(詳細は近松教授の記事をご覧ください)をなさっており、Discussionも難なく回答されておりました。「私も緊張します」とおっしゃっておりましたが、(本当かよ!)と心の中で軽くつっこみを入れた私でした。
また、愕然としたのは言葉の壁だけではありません。世界には同年代のみならず自分より若くして活躍している頭頸部外科医・研究者が多くいて、自身の研究成果や功績を当然のように、それも自信満々に発表している現実を目の当たりにしました。自分と同じ立場であるResidentだけでなくMedical Studentも多くいて、発表そのものがもはや論文なのではと錯覚(実際そうかもしれません)するレベルのものばかりでした。どんな些細なことでもそこに着目し、アイデアとして、研究テーマとして解析し結果を導く力が既に完成されているようでした。現在の日本の医学教育制度が欧米と比較して劣っている・遅れているとかそういうことではありませんが、医師として、耳鼻咽喉科・頭頸部外科医としてのそもそもの土台が、スタート地点が天と地ほどの差があるように感じられ、自分と世界との距離を感じずにはいられませんでした。繰り返しますが、教育のせいにするつもりはありません、自分が悪いのです。これまでの私がいかに呑気に暮らしてきたのかを思い知りました。初めての海外学会参加でしたが、実際に参加して、また発表して初めて実感できたことであるのは間違いありません。今回得られた経験と教訓、知識を活かし、今後の自分の目指すところに少しでも近づけるよう励みたいと思います。
余談ですが、学会会場を近松教授と歩いていたところ、CheckMate 141 ClinicalTrials(Nivolumab for Recurrent Squamous-Cell Carcinoma of the Head and Neck)の筆頭著者であるRobert L. Ferris先生、近松教授のピッツバーグ留学時代の同僚でいらっしゃったThomas先生にお会いし、畏れ多くも一緒に写真を撮っていただいたのは良い思い出です。ちなみに、近松教授は自分だけネクタイをしていなかったと後で嘆いておられました。
また、学会の合間に少しばかりモントリオールを堪能してきました。旧市街や港街を散歩しつつ、モントリオール・ノートルダム大聖堂と考古学博物館に足を運びました。大聖堂には心洗われるブルーを背景にイエス様が鎮座されており、荘厳な雰囲気に包まれて多くの観光客が魅入っていました。考古学博物館ではモントリオールの街が形成された歴史を学びました。モントリオールって島だったのですね、知りませんでした。ついでにエジプト考古学の展示も見てまわり、知識欲が満たされました。
モントリオールの食事で名物と言えば、スモークミートサンドとべーグルだそうです。どちらも私好みで非常に美味しかったですが、何にせよ物価が高すぎて涙が出そうでした。円高推移を一概に望む訳ではないですが、日本円もう少し頑張れ。
そして、近松教授に連れて行っていただいたフレンチレストラン(Jerome Ferrer Europea)、最高でした。味と香り、見た目、テーマ、どれをとっても最高でした。完成されたフレンチエンターテインメント(?)と言ってもいいでしょう、シェフの才能に脱帽。私の乏しいフレンチ経験から論評するのは烏滸がましいですが、今までで一番のフレンチでした。これだけでも学会発表頑張ってよかったと思えました。近松教授、ありがとうございました。
最後に、本国際学会に快く送り出していただいた医局の先生方、また日頃よりご支援をいただいております同門会の先生方に心より感謝申し上げます。また、発表に際してご指導いただいた紫野先生、近松教授に改めて感謝申し上げます。