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お知らせ

カンボジアでの耳鼻科医療支援①

こんにちは。

松山です。

今回カンボジアにて耳鼻科医療支援を行ってきました。

JICAなどとは関係なく、ほぼ個人的な活動です。

なぜカンボジアで耳鼻科医療支援活動??なんて思われるかもしれません。

今回の医療支援までには長いいきさつがあるのですが、できるだけ簡単にお話させていただきます。(詳しく知りたい方は声かけて下さい)

カンボジアでは1976年からのポルポト政権による知識人大虐殺により、多くの医師が殺され、また当時の政策により医学書なども焼き払われてしまいました。1990年代、ポルポト政権崩壊後の復興を始める当初は、わずかに生き残った医療従事者により医療が担われていました。当時の課題はプライマリーケアと医療従事者の育成。本当に1からのスタートです。

 

1995年の統計では医療従事者の介助のもと誕生する子供はわずか30%、25人に1人の赤ちゃんは1カ月以内に亡くなり、また約9人に1人の子供たちは5歳未満に亡くなっています。半数の子供は深刻な栄養失調であった。

カンボジアの悲しい歴史です。

その後、海外から支援が入りますが、優先度としてはどうしても救急や周産期の新生児乳児幼児に目が当てられます。

経済的理由や医療環境の不足などで治療を受けられない医療後進国において、私に何かできることはないか、大きな支援はできないが、小さな活動の中で少しずつ支援することはできるのではないか、そんな思いが今回の耳鼻科医療支援のはじまりです。

滲出性中耳炎で長期難聴になっている子や耳垢塞栓で聞こえが悪い方、鼻ポリープで鼻閉になっている方などは、比較的安価な医療器材があれば、治療を行うことができる。そこで、医療後進国の耳鼻咽喉科医療はどうなっているのだろうかと医療視察から始めました。

以前に行ったベトナム、カンボジアの医療視察でもお話したいことがたくさんあるのですが、できるだけ端的にお話します。

 

まずカンボジアの実状を簡単に。

『カンボジア医師数』

総医師数は2,568人程度 (2014年)

1万人あたり医師数は2人にも満たない

群馬県の人口はおおよそ200万人ですので、群馬県内に医者が200人もいないというイメージです。

『カンボジアの平均年収』

カンボジアは、アジアの新興経済国として急速な経済成長を遂げています。

しかし、平均年収は約1,200米ドルとされています。(1ドル=150円として18万円)

年収ですからね。

物価の違いもありますが、その生活水準や生活費は、先進国に比べてかなり低い水準にあります。

ベトナム、カンボジアには包括的な医療保険制度が整備されていません。そのため、医療費は基本的に個人の加入する医療保険と自己負担で支払うことになります。もちろん大多数の貧困層は保険加入できませんので、病気やケガで病院に行けなくなります。そこで、保険加入していない人は国が指定する公立の医療機関を受診することになります。

 

ちなみに日本は国民皆保険ですので、基本的に全国民が3割負担(高齢者は所得によって負担率がかわる、0割の方もいる)です。高額医療費という制度もあります。民間病院でも公立病院でも患者側が支払うお金は同じです。その自己負担金を、さらに個人医療保険で払う人もいるといった感じですね。

 

ベトナムの大都市ホーチミンの海外の民間病院が経営する病院では非常に医療設備が整っていました。病院を受診できる人は富裕層や海外駐在員、海外旅行者などが対象です。

最新のCT、MRI、エコーにオリンパス上部下部内視鏡まで揃えてあり、院内も非常にきれいでした。

 

カンボジア、シェムリアップという中都市での民間、州立病院を視察しました。シェムリアップはカンボジアの世界遺産であるアンコールワットがある都市で観光客が非常に多く、わりと大きい都市ではあります。

 

シェムリアップの民間病院は割愛します。(聞きたい方は声かけて)

シェムリアップの州立病院が衝撃的だったので、こちらをお話します。

シェムリアップ州の人口は約100万人、その中に州立病院は3つあり、シェムリアップ州のほとんどの人がこの3つの病院にしか受診できません。

中央にある棟は2023年、日本のJICAの支援で建設された棟で、この建物はきれいでした。

写真は入院棟で現地の人はICUであると言っていました。酸素は壁に配管されておらず、ボンベが外に並べられています。室内は不衛生で、感染対策はされていません。食事病衣の提供はなく、家族が持ってくるとのことです。入院は家族の付き添いがないと入院できません。

患者さんが多すぎるため、室内に入りきらず、外にベッドが置かれています。大きな部屋に所狭しとベッドが並べられて点滴がつなげられています。

状況をみるからに、検査や診断はされていないと思われ、おそらく対症療法だけかと思われます。苦しければ酸素、点滴、抗生剤といった感じでしょうか。

感染症や外傷患者以外にも癌や血管系、膠原病などの患者もいるでしょうが、おそらく診断までいかずといった感じが見受けられました。

 

耳鼻科病棟もあり、耳鼻科医にも話を聞くことができました。

院内に耳鼻科医は3人、JICAからの支援で群大と同じ第一医科の新しいユニットがありました。日本の支援もあり、ある程度設備は整っていました。

ただ、耳、鼻の全麻手術はしていなく、癌の治療もしていないとのこと。外来でできる治療と頸部の簡単な手術だけといった感じでした。手術症例や重症例、癌症例はすべて首都のプノンペンで行われていると言っていました。

シェムリアップからプノンペンまで車で5,6時間です。入院には家族の付き添いが必ず必要です。月15000円程度の収入の方たちが、プノンペンまで行くかどうか。答えは難しくありません。

『カンボジアの医療』

・カンボジアの医療は格差が非常に大きい

・大部分の貧困層の医療は今現在も非常に低い

・カンボジアでは耳鼻咽喉科診療はほぼ行われていない

そして、私が一番強く思ったことは『カンボジアの人は病院に行かない』です

それは、お金がないからとか医療体制が整っていないからとか様々な理由があると思いますが、まず、お腹が痛いとか熱があるとか、そういうものに対して、病院に行くという感覚がないように思いました。今、本当に相当困ってないと病院には行きません。

我々にできることはたくさんあるけれど、根は深い。

どうすればいいのか。

長くなりました。これ以上書くと読む気なくなりますよね?

一旦休憩。続きはまたアップロードします。

松山敏之

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