HOME > お知らせ > 未分類 > Nijmegen Ear Surgery Course参加記

お知らせ

Nijmegen Ear Surgery Course参加記

こんにちは、茂木です。

ニューオーリンズから一路、オランダへ。

今回オランダNijmegenにあるRadboud大学で開催される「Nijmegen Ear Surgery Course」に参加してきました。正式名称は『58th Nijmegen Postgraduate Course in Ear Surgery』。なんと1966年から毎年続いているとのこと。私が生まれる前からあるんですね。もはや伝説のコースと言っていいでしょう。Neurotologist/Skull Base Surgeonを目指す私にとっては、まさに聖地巡礼のような場所です。

  

私がこのコースの存在を知ったのは10年ほど前。イタリア留学中に某大学の先輩から「オランダにいいコースがあるよ」と聞き、以来ずっと参加したいと思っていました。そして、ついにこの地を踏みました。

  

受講生は世界各国から37名。デンマーク、フィンランド、イギリス、カタール、フィリピン、イラン、ウガンダなど、ヨーロッパ以外からも数多く参加。講師陣もドイツ、フランス、イタリアなど、ヨーロッパ中から名だたるエキスパートが集結しています。

コースは、レクチャー、ライブサージェリー、そして側頭骨ダイセクションの3本立て。5日間、朝8時から16時まで、みっちりスケジュールが組まれています。

側頭骨ダイセクションでは、普段なかなか触れない錐体尖部や頸静脈孔、迷路の解剖を再確認できます。今後、当院でも頭蓋底手術の患者さんを数例予定しています。術前プランニングがしっかりできました。しかも、今回は近い将来日本でも薬事承認される(という噂の)KURZ社製のチタン製耳小骨を使って、内視鏡下での伝音再建にも挑戦可能(実は、あの人工内耳のメーカーであるメドエル社のラインナップにチタン耳小骨があることも初めて知りました)。

ライブサージェリーでは、Osia(2025年5月現在、日本では薬事承認済み、保険収載はまだ)埋込術や、外傷性アブミ骨前脚骨折に対するチタン製耳小骨を用いた伝音再建、さらには慢性外耳道炎に対するcanaloplasty、中頭蓋窩アプローチによる髄液漏閉鎖など、想像以上にバラエティ豊富。日本ではなかなか経験できない術式も多いです。エキスパートの手術をリアルに見ると、本当に学びが多い。やはり、手術は実際に見て学ぶべきだと改めて感じました。

日本未導入のデバイスに触れることができるのも海外コースの醍醐味です。日本では全くその名前を聞かない骨導インプラントPontoやSentioと、日本で使えるデバイスとの有効性や違いについて、経験豊富なAudiologistから事例を交えた話を聞けたのは非常に有益でした。

日本ではまず見かけない青色レーザー(波長445nm)も体験。熱損傷が少なく、さらに光ファイバー経由なので照射デバイスに柔軟性があり、内視鏡下手術との相性は良さそうです。CO2レーザーの炭化や取り回しの悪さに不満を感じていた私には、かなり刺さりました。「これ、日本にはいつ来るんだろう…」と心の中でつぶやきながら。。。

レクチャーがカバーするのは伝音再建から人工聴覚器、さらには聴神経腫瘍を含めた頭蓋底疾患まで。レクチャー後にはディスカッションの時間も長く取られます。質疑応答からも得るものが多いのですが、正直、全ては聞き取れませんね。

その日のスケジュールを消化すると、参加者全員でディナー。サマータイムであったこともあって、この時期のオランダは21時でもまだまだ明るい。何より様々な国からの受講生がいて、その国の現地の人に異文化を教えてもらえる絶好の機会となります。拙いジャパニーズイングリッシュですが、ネイティブでない方も多く、皆さん優しく色々な話をしてくれました。

それにしても本場のオランダ料理、本当に美味しいですね。ライ麦パンも香ばしく、噛むほどに味わい深い。

  

ところで、オランダって自転車が人間より多いと聞いていましたが――本当にそうでした。朝も昼も夜も、道には自転車がわんさか。うっかり自転車専用レーンを歩いてしまったら、容赦なくベルを鳴らされ、鋭い目線を向けられます。慌てて歩道に避難しないといけません。

アムステルダムにも途中下車。

   

最後に、長期間の出張にも関わらず送り出してくださった医局の先生方、診療をフォローしてくれた先生方に心から感謝申し上げます。この経験を必ず日々の診療に活かしていきます。

 

トップへ戻る