松山です。
4年に1度開催される世界耳鼻咽喉科学会、IFOS 2026@イスタンブールに行ってきました。
前回のドバイ開催から早4年弱。月日がたつのは、本当に早いですね。
さて、皆さんはトルコに何を思い浮かべますか?
私の場合、「ケバブ、トルコアイス、カッパドキア」くらい。イスタンブールも「名前は聞いたことがある」という程度でした。ところが、実際に行ってみると、これがとても魅力的な街でした。街を歩いて最初に思ったのが、
「魔女の宅急便で、キキが暮らしていた街みたいだな」
ということ。
ボスポラス海峡に面した丘の街で、斜面には赤い屋根の家々が並び、その間からモスクとミナレットがそびえ立っています。海岸近くにはトラムが走り、ヨーロッパの文化とイスラムの文化が自然に入り交じっている。歩いているだけでも楽しい、美しい街です。
そして、実際にボスポラス海峡を目の前にすると、この街が昔から重要な場所であり続けた理由がよく分かります。
黒海から外洋へ船で出るためには、ボスポラス海峡を抜け、マルマラ海、ダーダネルス海峡を通り、エーゲ海、そして地中海へ向かいます。目の前の海峡を、大型輸送船やタンカーが次々と通っていきます。ここから地中海を通って大西洋へ。あるいはスエズ運河を抜けてインド洋へ。そして、その先は世界各国、もちろん日本にもつながっている。
そう考えながら海峡を眺めていると、
「この目の前の1km程度の海峡が、世界に影響を与えるのだな」
と、なんだか不思議な気持ちになります。
軍艦などの航行にも関わる海峡であり、イスタンブールが古くから地政学的に極めて重要な位置にある都市であることを、現地に来て初めて肌で実感しました。ロシアによるウクライナ侵攻以降、なぜトルコやボスポラス海峡がたびたびニュースに登場していたのかも、実際にその場所を見てみるとよく分かります。
さて、そろそろ学会の話をしましょう。
今回、私はCRSwNPに対する生物学的製剤の選択について発表しました。
鼻科領域のBiologicsのセッションを聞いていて印象的だったのは、世界のシンポジストやパネリストが議論していることが、私たちが日常診療で考え、悩んでいることとそれほど変わらなかったことです。「世界の最前線でも同じことを考え、同じことで困っているんだな」
そんなことを確認できたのは、今回IFOSに参加した大きな収穫の一つでした。
もう一つ印象的だったのが、Rhinoplasty(鼻形成)の存在感です。
海外では鼻形成を耳鼻咽喉科医が担うことも多く、IFOSでも非常に大きな比重を占めていました。鼻は、単に見た目をきれいにすればよい臓器ではありません。呼吸、嗅覚、加温・加湿など、多くの機能を持っています。その機能を損なうことなく、形態も整える。その両方を理解している耳鼻咽喉科医が鼻形成を行う意義を、改めて感じました。
そして、もう一つ心に残ったのが、アフリカ諸国におけるESSについてのセッションです。
タンザニアやスーダンなどの先生方が発表されていました。
ここではBiologicsやRhinoplastyの話はほとんど出てきません。代わりに、非常に進行した真菌感染症や鼻副鼻腔悪性腫瘍など、日本ではなかなか遭遇しない症例に対する治療が報告されていました。十分な設備がなく、指導できる医師も限られた環境の中で、それでも目の前の患者を治療しようと尽力されている。最先端のBiologicsの議論がある一方で、限られた医療資源の中で感染症や進行癌と向き合っている医師もいる。同じ会場でその両方を聞くことができるのも、世界学会の面白さなのだと思います。
最後に、少し学会発表について。
私は後輩に学会発表の指導をするとき、
「予演が終わった時点で、学会発表はほぼ終わっている」
とよく言います。
少し極端な言い方ですが、要するに「本番よりも、それまでの準備が大切」ということです。
近松先生も以前、同じようなことをおっしゃっていました。
学会の目的は勉強することですが、発表に至るまでのプロセスで実は参加当日までにかなり多くのことを身につけています(疾患の知識はもちろん、論理的思考、プレゼン能力、まとめる力など)
そして、世界のイチローさんも、同じようなことを言っています。
「本番が始まる前の準備ですでに結果は決まっている」
何かを成し遂げようとするとき、「その前に、どれだけ準備を積み重ねられるか」
これはスポーツでも、研究でも、学会発表でも、きっと同じなのでしょう。
十分に準備して学会に臨めば、現地では自分の発表だけに追われることなく、他のセッションから新しいことを学んだり、いろいろな人と話したり、さらにはその土地の歴史や文化に触れたりする余裕も生まれますしね。
今回、IFOS 2030の開催地は香港となりました。IFOS 2030にも参加できるように、また4年間、研究に励んでいきたいと思います。
本出張を支援してくださった医局の皆様、同門会の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。
松山敏之











